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2018-11-05

私がエシカルウェディングを選んだ理由  私のエシカルウェディングづくりvol.1

「あれ、雨止んだみたい」

てるてる坊主を作るときは、いつも満面の笑顔にする。その効果あってか朝からぐずぐずと降り続いていた小雨は、招待客が集まる頃にはあがっていた。雨が降ってもいいようにと庭にテントを張っていたけれど、やっぱり“ハレの日”は晴れているほうがいい。

(写真:©︎ainowa photography)

私たちが結婚式の会場に選んだのは、二子玉川にある一軒家フォトスタジオ「スタジオレモン」。広い庭のある小さな一軒家は、一目で気に入った場所だ。奥にある控え室から会場を覗くと、招待客はみんなウェルカムドリンクを片手にお喋りしている。

バングラデシュからやってきた、柔らかなウェディングドレスの裾を持つ。さあ、私たちのエシカルウェディングの始まりだ。

(写真:©︎ainowa photography)

人生の「特別なとき」だから 

私は大学時代に国際協力を専攻し、世界のさまざまな問題を勉強する中で児童労働を知った。学校にも行かれずに、働かなくてはいけない幼い子どもたちがいること。その仕事の多くはカカオやコットンなどの栽培などで、それが巡り巡って、チョコレートや衣服となって日本の私たちにも届いていること。そこではじめて「自分の身の回りのものが、誰かの手によって作られている」と実感した。つまり「私の消費」は「誰かの生活」に大きな影響を及ぼすということなのだ。

「エシカル」という言葉を知ったのは、社会人になってから。日本語で「倫理的」という意味のとおり、作り手や環境に配慮したブランドや商品のことをそう呼ぶ。  まさに私が感じた「作る誰か」を意識した消費だ。

エシカルという言葉が流行し出して、今やたくさんのエシカルブランドを見ることができるようになった。女性のエンパワメントに繋がる商品や、リサイクル・アップサイクルなどの地球環境に配慮したものなど、その切り口はさまざま。日本で生活しながら「物」を通して、世界の人々と繋がれることが嬉しくて、私はどんどんエシカルにのめり込んでいった。

当時、弱冠24歳の私を悩ませたのは、その値段。普段はファストファッションで買っている洋服やアクセサリーは、エシカルブランドの半分以下の値段だった。エシカルな商品を買って作り手にフェアな金額を払いたい、と思いながらもなかなか手を出せないでいた。「特別なときに買おう!」そう言い続けて、ようやくそのときがやってきた。結婚式だ。

これ以上ない「特別なとき」。人生において最高に幸せな瞬間だからこそ、それを彩る「物」の向こうにいる作り手の人たちも幸せにできるような買い物がしたい。

(写真:©︎ainowa photography)

バングラデシュの手仕事に出会って 

「Walk in Beauty」は加唐花子さんが立ち上げたエシカルウェディング専門のプランニングプロジェクトだ。「エシカルを取り入れた結婚式がしたい」という新郎新婦の希望に沿って、アイテムの紹介やロケーション、進行の仕方などいろいろな提案をしてくれる。

メールを送るとすぐに返信があって、数着あるウェディングドレスを試着させてもらえることになった。訪れた部屋の中にはドレスだけでなく、アクセサリーや小物類が並んでいて、それぞれの商品に背景があると思うと「全部ください!」と言ってしまいたくなる。

花子さんは「大切な日だからこそ、エシカルを取り入れたい」という私の目をしっかりと見て、うんうんと話を聞いてくれた。フェアトレードやエシカルに、ずっと向き合ってきた花子さんだからこそ、ひとつひとつの商品やその活かし方にも思い入れが強い。

その日試着したドレスも、全て個性があって優しいものばかり。背中に大きなリボンがついた華やかなドレス、 オーガニックコットンのシンプルなドレス 、そして胸元から裾への手刺繍が美しいドレス。花子さんは「これはバングラデシュの手刺繍で、模様も一つ一つオリジナルでね…」と背景を説明してくれた。遠い国の誰かが、ひとつひとつ手で縫ったという細かい手刺繍を見た瞬間、そのバングラデシュのドレスに決めていた。

   

(写真:©︎ainowa photography)

「このドレスを作った人に、今度の結婚式で着ると伝えたら、きっと喜ぶよ」

試着を終えたとき、花子さんがそう言った。素晴らしいドレスをありがとう、と伝えたい気持ちが溢れ出てきた。

今、私の手にあるこのドレスは、遠い国の「あの人」が作ったもの。どんな人が作ったんだろう、どんな生活をして、どんな人生を送ってきたんだろう。生まれた場所を知るだけで、この腕の中のドレスがなんだかとても愛おしかった。

 

結婚式を自分たちでつくる 

(写真:©︎ainowa photography)

夫はエシカルとは無縁の人だ。だから私は、結婚式のすべてをエシカルにするつもりは最初からなかった。自分のドレスとアクセサリーくらいは、と思っていた程度だ。

だから無事にドレスとアクセサリーを購入できて、とても満足していた。花子さんも「まなちゃんのできる範囲で取り入れればいいと思うよ」と言ってくれていたので、少しでもエシカルを取り入れられてよかったと思っていた。とても満足感のある買い物だ。

しかしその日以降、Walk in Beautyを訪れたときの胸のときめきが収まらなかった。「エシカルウェディング」という言葉だけで、胸がドキドキして、鼻息が荒くなってくるようだった。花子さんのやっていることは、なんて素敵な仕事なんだろう。私も、エシカルを取り入れたい人たちの結婚式を手伝いたい。

鼻息が収まらず、私は花子さんに電話をしていた。忘れもしない、家の近くの川のほとりで携帯電話を握りしめる手は汗ばんでいた。

「花子さん、急にこんなこと言ってすみません。私もエシカルウェディングを作ってみたいです。花子さんのところで働かせてもらえませんか?」

唐突すぎて、花子さんを本当に驚かせてしまったと思う。一瞬の沈黙に、自分の心臓の音が聞こえた。

あいにく人は募集していないとのことだった。残念だけど、当たって砕けたので悔いはない。そうですか、とお礼を言って電話を切った。その数日後、花子さんから電話があった。

「ねえ、まなちゃんの結婚式を一緒に作らない?」

また、自分の心臓の音が聞こえた。憧れのエシカルウェディング。まさか自分で手作りすることになるとは。

こうして、私のエシカルウェディングづくりが幕を開けた。

 

結婚式をつくることで見えてきたもの

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。製造業や野菜販売の仕事を経て「もっと消費者が作り手のことを思う世界にしたい」という思いから、主に職人や物の向こうにいる人に取材・発信している。刺繍と着物、食べること、民族衣装が好き。

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