収穫前の「ケ」の暮らし。心地よさを選択する秋。

 

 

夏の暑さがあっと言う間に過ぎ去り、いわし雲に夕焼けが写りこむ空や、少し湿気が薄まった涼やかな風が肌を撫でるたびに、秋を感じています。

 

そんな秋といえば、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋など様々なことに適している季節だという印象がありますが、二十四節気の観点から考えると代表的なのは実りの秋でしょうか。

 

白露のこの時期は、秋の実りを迎える前の時期。春から育んできた穀物がしっかりと収穫できるように、と昔の方は慎ましく暮らしながら、豊かな実りを祈ったといいます。

 

ハレとケという言葉をよく耳にしますが、この言葉は民俗学者の柳田國男が提唱したものです。お祭りごとや稲作の収穫などのおめでたいことのことを「ハレ」と言い、一方で普段の暮らしのことを「ケ」といいます。

晩秋に向けて、収穫に感謝をするお祭りなどがたくさん。一方で、夏が終わって収穫を迎えるまでの初秋は「ケ」の暮らしをしていました。秋の稲を収穫する前の時期は、浮かれて過ごしていると神様は恵みをもたらしてくださらない、と考えられていたからです。

この収穫前の物忌みですが、もちろん収穫への祈りも意味合いとして含まれているようですが、きっと体のバイオリズムの調整も、要素の一つであったのではないか、と私は推察しています。なぜなら、私たちの体は、キュッと集中してエネルギーを発散するばかりでは、疲れてしまいますから。暮らしの中で、こつこつと力をためていくような時間があらかじめ風習として設定されていた、と考えると日本文化がいかに人間の体力と自然のリズムに寄り添って培われているものか惚れ惚れしてしまいますね。

 

「ケ」の日常を心地よく

そんなハレとケですが、季節の頃合いも手伝ってか、最近のわたしは「ケ」ブームです。そのため、いかに「ケ」の日常を心地よく出来るのかを追求しています。

月に1〜2回、京都の暮らしを離れて東京に数日間帰省しているのですが、わたしにとって東京滞在はハレの日のようなもの。あれこれ人に会い、刺激をいただくような時間です。

そのため、その反動のように京都に戻ってきた後は、とにかくぎゅっと暮らしに気持ちが向かいます。

人は睡眠時に、その日の出来事や感情や情報を整理していると聞いたことがありますが、それと似たような効果が「ケ」の暮らしにはある、とわたしは思うのです。

そんなわたしの「ケ」の暮らしを充実させてくれるなぁと最近しみじみ感じたのが、「亀の子たわし」「亀の子スポンジ」です。

 

亀の子たわしとスポンジ(フォレスト)の並んでる色味を眺めているだけで幸せになります。

 

 

しっかりとした程よい硬さのあるスポンジで、スイっと食器にすべらせた時の感覚。

たわしでフライパンを洗うと力を入れなくても、汚れが落ちる落ちる。

今まで使っていたスポンジでももちろん洗えますが、道具を変えるだけでこんなに心地よく、ストレスがなくなるのかと驚きました。

100円でいくつかセットのスポンジを購入することができることを考えると、少しばかり贅沢だと思われるかもしれません。けれども、使い心地が良いというだけではないのです。スポンジは、毎日食後に3回使うものですから、自分の手肌と触れ合う機会が実はかなり多い「モノ」だと思いませんか?

自分では意識していなくても、私たちは触覚から様々なものを受け取っています。その触覚を少しばかり心地良いもので満たす。そうすると、他の物事についても、ちょっとの違和感や不快感に気がつけるようになりますよ。

そして、その違和感や不快感をもとに、心地よくするための試行錯誤をする。その繰り返しによって、自分の筋力が鍛えられるのではないでしょうか。

本当にちょっとした贅沢のケの暮らし。慎ましく暮らす「ケ」とはちょっぴり矛盾していますが、自分の暮らしの心地よさを高めることができる秋を皆様がお過ごしになれますように。

 

季節のお便り

 

【白露】

立秋から暦の上では秋でしたが、ようやく実感としても秋めいてきました。大気中の水蒸気が冷えて露が降りるころ。引き続き台風など天気が荒れることも警戒が必要な時期ですが、一方でお月さまを美しく眺めることができるのも今。

【草露白し(くさのつゆしろし)】

秋の植物たちの葉の上に、白い露がおりるころです。明け方しかみえない露は儚さの象徴でもあります。秋は、気候だけでなく、お月見などの風習といい、なぜか儚いこころもちにさせる物事が多いですね。

【鶺鴒鳴く(せきれいなく)】

鶺鴒(セキレイ)が鳴き始める頃。チチィ、チチィと鳴き、尾がながく、白と黒の羽を持った鳥がいれば、それはセキレイです。幸運を告げる縁起の良い鳥とも呼ばれています。

【玄鳥去る(つばめさる)】

春先に飛来してきたつばめが子育てを終えて、東南アジアへと帰っていきます。三千〜五千kmとも言われている距離を飛来するときにどのように方向を定めているのだろう?と驚いてしまいますが、太陽や星の位置を用いているのだとか。

 

参考文献

『七十二候で楽しむ日本の暮らし』広田千悦子 角川ソフィア文庫/『二十四節気と七十二候の季節手帖』山下景子 成美堂出版/『七十二候のゆうるり歳時記手帖』森乃おと 雷鳥社/『くらしを楽しむ七十二候』広田千悦子 光文社知恵の森文庫/「七十二候の見つけかた 旧暦と自然によりそう暮らし」白井明大 飛鳥新社