ブルーノ・ムナーリ展鑑賞記

 

神奈川県立近代美術館葉山にて、「ブルーノ・ムナーリ:こどもの心をもちつづけるということ」が開催されています。ここは、水平線の見える海と山に囲まれ、広やかに抜ける風と波音が心地よい美術館。イタリア出身の独創的なマルチ・アーティスト、ブルーノ・ムナーリ(1907-1998)の展覧会場にぴったり。

 

本展は、芸術家、デザイナー、美術教育家、文筆家として、多彩な活動を繰り広げたムナーリの日本最大の回顧展です。葉山館の明るい白壁の展示室に、色とりどりの絵画、オブジェ、絵本を使った作品が並んでいました。

最初の展示室「プロローグ:未来派の頃」で初期作品が展示された後は、一般的な展覧会のような時系列の展示ではありません。学芸員さんによると、その理由は、そうしても意味が無いから(!)。様々なジャンルを制作していたムナーリの作品を時代順に並べても混乱するだけ、ということだそう。

 

ムナーリは20もの肩書をもち、自分では「〈役に立たない機械〉をつくった男」と名乗っていたそうです。この〈役に立たない機械〉(展示されているのは1930〜1940年代の作品、一部再制作)は、第一展示室で最初に目に飛び込んでくるモビール作品です。素朴な色で塗られた木片や紙が糸でつながれ、天井からぶら下がり、わずかな空気の揺れでゆらゆらと動きます。

 

「機械」は、通常は役に立つもの。ですが、ムナーリにとっては、こうしたモビールのような動きの連鎖こそが「機械」。作品もタイトルも、なんともユニーク!

 

〈旅行のための彫刻〉、〈短い訪問者のための椅子〉も、発想と造形がユニークです。前者の折りたたみ式彫刻は、旅先でいつもの自分の空間をつくるためのもの。後者は、極端な傾斜がついたとても綺麗な椅子です。この椅子を愛想よく勧められたら、、、京都の「ぶぶ漬け」を連想しました!

 

また、ムナーリは日本では絵本作家として知られているかもしれません。ムナーリの絵本には、あまりストーリーらしいストーリーがありません。そのかわりに、純粋に絵や、絵本の素材、大きさ、ページを繰る行為そのものを楽しむことができる作りになっています。会場で仕掛け絵本のような『たんじょうびのおくりもの』、『ミラノの霧の中で』等の実物や原画を見ながら、あらためてモノとしての本の魅力を思い起こしました。

 

『読めない本』シリーズは、一部を切り取ったページにそれぞれ異なる色を塗り、綴じた絵(?)本です。文字も絵もないのですが、色と形「だけ」に強く引きこまれ、ムナーリの造形の魔法にかかった気分でした。

 

幾何学的な絵画作品もあり、中でも〈ベアーノ曲線の色彩〉シリーズは、数学好きのムナーリのマニアックな一面が面白い!

そして、会場の途中で、「こどもの心をもちつづけるということ」という本展サブタイトルの元となったムナーリの文章が紹介されています。ぜひお見逃しなく、ご覧ください!

 

見慣れた素材や、日々の生活をかたちづくるモノの新たな一面に、クスっと笑ったりドキリとしたり。きっと鑑賞者一人ひとりに異なる気づきや発見があり、見終わった後に誰かと話したくなると思います。豊かなコミュニケーションを生み出すアートの奥深さ、楽しさ。私がこの展覧会で再発見したことの一つです。

 

展覧会を満喫し、外に出ると爽やかな潮風と波の音。きっと、ムナーリもこの会場が気に入ったと思います。神奈川県葉山の後は、福岡県北九州市、岩手を巡回後、東京世田谷区に戻ってくるようです。皆さま、どうぞ足をお運びください♪

 

【巡回スケジュール】

神奈川県立近代美術館 葉山 4月7日(土)〜6月10日(日)

北九州市立美術館 分館 6月23日(土)〜8月26日(日)

岩手県立美術館 9月8日(土)〜11月4日(日)

世田谷美術館 11月17日(土)〜1月27日(日)