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2020-08-13

暮らしの道具店ロク|リアルでしか、まかなえないこと

*2020年8月にマスクをして、距離を保った状態でインタビューさせて頂きました。営業状況などは状況によって変化するため、最新の情報はロクのWEBサイトをご覧ください。

以前(2019年11月)にも取材させていただいた生活用品と器の店、ロクの橋本さん。静かながら精細さのある姿で、インタビューに協力してくださりました。

ロクは、品揃えを変えない、オンラインショップをしないというのを貫いてこられました。お客様に来ていただいて、じっくりと手にとっていただき、触れて、お客様自身で選択して購入していただくことを大切にしているお店です。

COVID-19で緊急事態宣言が発令された時にはお休みをされており、今では平日は通常通り、土日や連休などでは混雑することもあるため、密を避けるために予約制にされていらっしゃいます。取材に訪れた際に、店内はCOVID-19以前と変わらぬ心地よさでしたが、前とは唯一異なっていたのが、看板が店内に置いてあること。週末の際の予約制では、営業しているのに看板を表には出していません。

新しい日常に変わりつつある現在に、どういったあり方で店舗を運営しているのか、今までと変わらないことや自粛期間を経たことで感じたことを伺いました。

店舗での仕事を休んでみて分かったこと

―COVID-19の自粛期間中に、今までの仕事が出来なくなったことで、今までの仕事の捉え方が変化しましたか?

休業中にロクの顔の分かる常連さんが連絡してくださって、ロクの店を知ってくださっているから、私も安心して物を送ることができました。物が欲しいという方と提供できる物が合致してお送りできたこともありがたく感じたんですね。

でも、コロナ以前に普通にお客さんに来てくださって、意図せずに会話が発生していたというのが、ロクの店舗での仕事ができなかった時に、思っていた以上に楽しく感じていたのだということがわかったんです。

もし、単純に物が好きなだけなら、配送しているだけで楽しかったはずなのですが、多分それだけじゃなくてそれ+αが必要なのだということが分かったんです。

―ロクでお客さんと話す時と、オンラインだけとどう違いますか?

ロクで会話していると、その物に何を求めているかとか、その周辺が見えるんです。

例えば、今持っている器はこうで、こっちもいいかもしれないとか提案ができますよね。ロクにくるとみなさん自然と選択肢が増えるんですよ。

なぜそうゆう選び方をしているのかという背景を聞くことで、ではこういう使い方あるよ等を提案できる。話が膨らんでいくんです。それが、すごく面白くて。

商品を通して、好きな食べ物の話になったり、好きな趣味の話になったり、お互いの仕事の話になったり、全然ロクに関係ない話にも飛ぶんです。それが面白かったんだなと思いましたね。

 

オンラインだと、“ハプニング”が起こらない

―オンラインだと、用件のみで、関係ない話が起こりにくいんですね。

メールだと、「このお皿が欲しいです」「このお皿気に入ってくださったんだな、じゃあ送ろう」というように、これ欲しいという情報がそれで終わってしまうのですね。顔を知っている方だと、物の売り買い以外のやりとりもちょっとはあるんですけど。

もちろん、メールはメールで仕事としてつかいますが、オンラインだけになると、わたしはそれでまかなえないんだなとおもいました。仕事のモチベーションがまかなえない。遠隔ツールだけで、ずっと好奇心でやっていられるかというとそうではなかったんです。

メールだと、自分の都合のいい時に返事をすればいいじゃないですか。遠隔だとリアルタイムではないからキャッチボールのスピード感が違うので、それが起きない。でも、ロクだとそれが起きるんですよね。

私はそれを“ハプニング”といっているんですけど。今日何が起こるかわからない、今日だれがくるのかわからない、それがすごく、大事なことだったんです。

―以前に、お取り扱いする商品が変わらなくても飽きないとおっしゃっていて、すごいなと思った記憶があります。

ロクの場合商品が変わらないですが、人って絶対変わるじゃないですか。来る方が違ったり、たとえ来る方が同じでも、心情とか、家族構成とか毎回違うじゃないですか。その変わる人たちを毎日どの時間に来るかわからないで接する。だから、全然飽きないんだと思います。

―これからも、オフラインの店舗で続けていきますか?

今までは、来れたじゃないですか。大変ですが、ちょっと遠方の方でも来ようと思ったら、来ることができましたよね。そして、物をみてくれて、触ってくれて、商品をちゃんと選んでもらって、その時には続けることができていました。

それを前提とした感覚として、私はロクをしている訳です。

でも、来てくださいと言えなくなってしまったじゃないですか。今までは言えていたんですけど。今では、来ることが出来なくて、外にも出ることが出来ないですよね。

もちろん、オンラインではなく、実店舗を続けていければそれが一番です。

それでも、店舗をつづけていけなくなったときに、お店閉めますというのか、いやオンラインでしますというのか、どっちを自分は選択するか、わからないです。

―オンラインに抵抗感を覚えるのは、どういうところからでしょうか?

オンラインだと同じ物を売っているところもあるだろうし、入手する手段になってしまうように思うんです。お客さんも変わると考えています。もちろんオンラインショップでも、このお店だから購入するという方もいらっしゃるかと思うのですが、そのお店だから買うというよりも、単純に物が欲しくて検索して購入するという方が多いと思うんです。

そうなったら、商品数が多い方が強いじゃないですか。いまはロクをひとりで営んでいるから、扱える商品も多くないですし。実店舗とオンラインは違いますよね。オンラインは、オンラインの勝負の仕方があって、店舗と同じやり方で通用すると思っていないんです。

ずっと店舗で働く仕事をしていたし、健康体でいればロクをずっと続けていけると思えるんですけど、ここからまた、オンラインをすることで通用するかどうかわからないし、いろんなことを考えますね。

―お客さんの立場でも、え、こんな商品あった?というのがあったり、予定外の物を欲しいと思ったり、お客さんの側の“ハプニング“もありますよね。

そうなんです。この色が欲しかった、けれども実際来てみるとこっちの色の方がいいかもと思って、来られる方も多分予定じゃないことがおきるんですよね。

予定の色じゃない方が欲しくなったりしませんか。こんな物もあるんだと思ったり、その場その場で起きる、体験みたいなこと。お店に限らずですが、それが、少なくなっちゃうとさみしいなって思っちゃう。

―私もPILOTのペンもあるの知らなかったんです。自分の想定していなかったけれど、自分の気にいる物と出会う喜びがありますよね。

でも今は、みんなそれを我慢しなくちゃいけないとなっているから。

―リアル店舗での体験を重んじていらっしゃるかと思うのですが、オンラインやネットはつかいますか?

ネットはネットで面白い世界ですし、買い物もします。それでも、みんな外へ出たいと思うのは、なんだろうと感じます。家だと接する物事が限られてくるけど、外に行くと、やっぱり自分が想定しない何かが起こりえるからだと思います。わくわくする感覚はやっぱり人間にとって必要なんだな、と思います。


想定しないことは面倒だけど、自分自身を濃くしてくれる

―想定しないことって、ともすれば面倒だったりすることもあると思うのですが、それを厭わず楽しめるというのが、ロクの橋本さんの良さでもあるのでしょうか。

例えば、転んじゃったりとか、お店で出会った店員さんの相性が悪かったとか、想定していないプラスではないことって、いっぱいあると思うんですよ。

それもひっくるめていいというか、そうじゃないと自分自身も濃くなっていかないですよね。都合がいいこととか、自分がプラスにしか感じないことだけを吸い取って生きていったら、それはそれで面白くないんだなって思っています。

だから、ストレスって悪くないと思っているんですよ。自分に対する負荷として、発見ができるから。プラスのこともそうでないことも、どっちも刺激がないと、じゃあ明日はこれしようといった、発想が湧いてこないんですよね。

―緊急事態宣言の最中は、どのようなことをして過ごされていましたか?

家のことしてました。みんなと一緒です。普段掃除しないところを掃除したりとか。ご飯を時間かけてつくったりとか。そういう感じで仕事を休んでいた感じですね。

それ以外には、映画観たりしていました。家で映画とか観るとしても、観たいときに観たい映画を観るじゃないですか。それで終っちゃうんですよ。そこに、予定外の出来事が入り込んでこない。

わたしは緊急事態宣言のときに家にいたら、今日が何曜日かわからなくなったのですが、ずーっと自分がプラスに思うことしかなかったからだと思うんです。だから、明日こうしてみようとかそういう意欲的な面が削がれてしまいました。

―プラスになることだけをしているから、プラスになるはずなのに、意欲的な面が削がれてしまったんですね。

そういう意味では、毎日、自分自身が悲しくなることも、いやなことも、もちろん楽しめることもいっぱい起こるんですけど。それら全部を消化していかないと、次に成長できなくなっちゃうんです。だから、物足りなくなっちゃうんでしょうね。



100%安全は、物足りない

―マイナスなことやリスクは、なんだか怖いような気がして、避けれるなら避けたいというのが一般的な考え方かと思うのですが、リスクについてどう考えていますか?

コロナの状況下にあって、今は心配事が多いですよね。そういうリスクなら、最初から除けるなら除いておいたほうがよいと思うんです。

けど、基本的には何をするにしてもリスクは伴うじゃないですか。私は山登りをするんですけど、もしも、何がどうやったって安全だという山があったとして、面白くないと思うんですよ。

―確かに、そんな山があったらつまらないかもしれないですね。

若いうちは、遊園地とかもいったんです。基本的に100%安全といわれている、人間がつくったエンターテイメントが用意されていますよね。もちろんそれも楽しかったんですけど、大人になると物足りない。

クライミングもするから、それよりも人間味があって、本当に自己管理を怠ったら命にかかわるかもしれないみたいな趣味が続いているんです。

リスクを自分で分かったうえで、自分でリスク管理して、リスクが0じゃないんだけど、ちゃんと準備して楽しむ。与えられた楽しさじゃなくて。

―リスクやマイナスなことを引き受けているからこそ、楽しいんですね。

なんでわざわざ、重荷を背負って、山にいくんだろうって、自分でも思うんですけど、やっぱりある程度負荷というか、リスクを考えつつ、それを超える楽しみがあることだからだと思います。

それとお店は結構近くて、リスクもとって、楽しみもあって、両方のバランスを吸収できるから、自分の中でずーっと継続できているんだと思います。

きっと、楽しみしか吸い取れないと続けられないし、リスクがないと続けられないのだと思います。

今日楽しいと思っていても、明日も同じ新鮮さを感じられるかというとどうなんだろう。飽きちゃう気がします。

“ハプニング”が起こらないと興味が持続しないのかもしれませんね。


ロクの橋本さんは、緊急事態宣言の時に、知人の方と元気だよとやりとりしたと仰っていたのですが、確かにCOVID-19を経ても、変わらない姿でお店に立っていらっしゃりました。でも、お話をお伺いすると、お休みの時には仕事のことを考えてしまうと不安になるから考えるのをやめていた、店舗で続けられるなら店舗で続けたいけれど、即答はできない、など迷ったり不安になったりすることも、誰しもと同じようにあるんだなと感じました。

店舗をお休みして家で過ごされていた時に、映画を自由に観ることがプラスなのですが、プラスにはならなかったりすることや、リアルな店舗で、良いこともそうでないことも“ハプニング”が起こり、その全てを消化して成長していくことが出来るというお話が印象的でした。

今はCOVID-19によって、リアルで偶然性によって出会うことを控えなくてはならないですが、ロクは連休中などは混雑してしまったと伺いました。(混雑した際には外で待っていただいたりと対策はしっかりととっていました)。全ての人がそうかはわかりませんが、それだけ各人が重きを置いていることに対して、時間やお金をつかうようにますますなっているとも言えるのだと感じます。

COVID-19によって、新たな日々が続いていますが、どうかそれぞれの人の生活が護られ有意義な毎日が過ごせますように。

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