コロナと戦う三輪の神~天(アメ)と大地(ツチ)のお素麺~
古代から日本では何度も疫病に悩まされてきました。
そしてその度に立ち直ってきました。
立ち直る切っ掛けはいつも神社や寺でした。
医学がまだ発達していなかった古代に於いて祭りや祈りとは精神を高め免疫力を上げる手段でもあったのです。
具体的に言うと神を奉ることでその力にあやかり、例え病に罹ったとしても神の御加護で必ず直るというポジティブシンキングにつながり精神から免疫を高めるという結果を得ることができました。
広い意味で言うと祭りや祈りも医療と言えるのかも知れません。
三輪が都だった頃にもそれはやってきました。
第十代崇神天皇の御代に疫病が猛威を奮い世の中は混乱していました。
人々は不安から秩序を失い都は荒廃していきます。
カリスマ性が高いと言われた崇神天皇を以てしてもなかなか思うように世の中は立ち直ることができませんでした。
そんな大変な事態の最中に崇神天皇はある夢を見るのです。
その内容というのが、夢の中に三輪に坐しますオオモノヌシの神様が現れて崇神天皇にこうおっしゃいました。
「河内に住むオオタタネコという人物を呼び寄せ大神神社を祀らせたならば世の中の立て直しに協力しよう。」
そして今の堺市に住んでいたオオタタネコを探し出し大神神社の神職に就かせると世の中の混乱は治まり平和な世の中が戻りました。
それからオオタタネコは初代大神神社の宮司となり毎年四月に鎮花祭を行い、それを以て疫病の恐怖から人々を救おうとしました。
ちなみになぜ花を鎮める行為が疫病から見を守ることになるのかと言うと、古代の人々は春に咲いた花の花弁が地面に散ることで疫病がもたらされると考えられていたそうです。
ウイルスを祝詞で倒すことはできませんが流行した後に取り乱した精神を穏やかに戻すことなら神社にできるかも知れません。
そんな時にはこれまたオオモノヌシのお告げで作られ始めた三輪そうめんをぜひ召し上がってください。
素麺はいろんな食材と相性が良いのでこの時期に旬のマダケの筍と一緒に召し上がりましょう。
似た食材にハチクがあります。
見分けるポイントは筍を包んでいる皮に模様が入っていればマダケ、模様がなければハチクです。
まず皮を全てむき適当な大きさに切り分け、大根の絞り汁と水を同量で合わせ1%程度の塩を溶かしたものの中に1時間程度漬け込みます。
これで大体の灰汁が抜けるので仕上げに5分程茹でてから5分程流水でさらせば灰汁抜きは完了です。
初夏の清涼感ある素麺に仕上げたいので鰹だしと味醂、塩で味付けします。
醤油を使うとマダケのきれいな色が消えるので今回は醤油は使いません。
色よく炊き上がれば素麺と共に盛り付けていきましょう。
旬の食材は肉体に力を与えてくれます。
素麺は神のお告げから始まった夏を乗り越える精神を与えてくれる食材です。
神の恵みと大地の恵み、正にあめつちから元気を頂くということです。
そんな神住まう三輪山を見る度に息子は、
「これ、しんごのお山だよ。」
と言ってきます。
もうすぐ4歳になろうかという、まだ幼い彼の目にも三輪山は特別に映っているようです。
三輪を訪れる全ての方がそれぞれの心象と重なり三輪山の風景をご覧になります。
良いときも悪いときも私達はいつも三輪山を眺めるのです。
三輪山に降る雨が悪い気持ちを流し、三輪山から登る朝日が全ての人に光を降り注ぐことが新しい希望の種を育んでくれるのです。
明日登る朝日も眩しくありますように。