「大豆のちから~奈良の節分と香ばしおにぎり~」
こっそり鬼のお面を被りどんどんと足音をたてて子供の前に現れます。
豆を握った息子はあまりの怖さに体が硬くなり泣いてしまい豆を投げるどころではなくなってしまいました。
天を仰ぎ、地面に響くような泣き声をあげながらお母さんから離れません。
「やりすぎたかな。」
加減を間違った事を後悔していると、子供は鬼に向かって勇気を振り絞り豆を投げつけてきました。
唇を噛みしめた口では「鬼は外」とは言えませんでしたが、目に涙を溜めて鬼に立ち向かって豆を投げる事ができました。
「痛たたた、参りました。帰ります。」
子供の勇気で鬼を退散させる事ができました。
その後に何も知らないのん気なお父さんが帰ってくると、家族のピンチに父親が居なかった事への理不尽さについて子供から叱られました。
豆の散らばった床の掃除は後回しにして子供に四粒の豆を渡します。
来年はもう少し加減をしながら鬼をしようと反省しながら、なかなか食べ切れない数の自分の
豆を食べました。
ちなみに大神神社の節分の掛け声は
「鬼は外、福は山。」
もちろん御神体の三輪山の事を差してこの掛け声になっています。
奈良町にある元興寺では
「福は内、鬼は内。」
福は内に入って来てください、鬼は自分の内側から出ていってくださいという願いの略です。
日本で初めて鬼が現れたとされるこちらでは雷神の力を帯びた童子が鬼を追い払った伝説が残されています。
吉野山の金峯山寺では
「福は内、鬼も内。」
節分で追いやられた鬼達をこちらでは受け入れています。つまり鬼達のセーフティネットとして機能しているのです。
日本に一つくらいこんな場所があってもいいですね。
以上、豆知識でした。
今回のお料理はその節分の大豆を使ったとても簡単なレシピです。
まず煎り大豆で出汁を取ります。
大豆をお湯に浸けて一晩置きます。
大豆で取った出汁は呉出汁といってとても甘味のある香ばしい出汁です。
この出汁でご飯を炊きます。
大豆も一緒に入れて豆ご飯です。調味料は一切いりませんので普通に炊いてください。
炊きあがるとほんのり甘味と香ばしさを纏った風味あるお米の味がします。
これに塩昆布を少し混ぜておにぎりにしましょう。
素朴ながらもクセになるおにぎりです。
子供と一緒におにぎりを頬張りながら来年にやって来るであろう鬼を退治する作戦を考えます。
突拍子もない作戦を次々と提案する子供の意見に来年の鬼役はつい笑ってしまいました。