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2019-03-20

三輪の春~桜と花見と神様の話~

どんより暗い雲から落ちてくる雨粒は冬の乾燥した空気に潤いを与え、晩冬の野に広がる動植物に季節の終わりを告げます。

花もりの庭に立つモクレンの蕾はよりいっそう膨らみだし、咲きだすタイミングを今か今かと計っています。

こうなってくるともうひとつの楽しみは大美和の杜に咲く早咲きの寒桜の開花です。
雨が弱まり、まだ止んだと云えない内に堪えきらずにフードを被りコンパクトカメラを携えて杜に向かいます。

四日前まで蕾だった寒桜の花はチラホラ咲き始めていました。

ソメイヨシノより白っぽい寒桜の花は雨に濡れると赤みがかりきれいなピンク色になるので、晴れた空の下で撮るのよりこんな日に写真を撮りたくなります。
霧状の雨がまだフードを濡らしているのに夢中でシャッターを押していると、今度は早春の野に響き渡たる

「ホーホケキョ」。

あまりのタイミングの良さに昔だったら座布団一枚上げたい気分。
今の時代は親指たてていいねマークをあげたい気分。
そして和食の仕事をしている自分としては春の野を器の上に写したい気分。

早速とりかかりましょう。

まずは花びらの形の大根を作ります。
3cmに輪切りした大根の皮を桂むきにして半分に切って半円状にします。
直線の面も丸く剥いて木の葉形にします。
木の葉にⅤ字に切込みを入れて一枚の花びらにします。
それを5㎜ほどにうすく削ぎます。

次は大根で八重桜です。

何重にも花びらが重なる八重桜を表現するには3cmに輪切りした大根を桜の型抜きで抜きます。
型抜きした桜は下を繋げたまま2mm程度に5枚スライスします。
切込みを入れた桜を少しずらして八重桜に見立てます。
八重桜も花びらも薄い塩水に漬けてしんなりさせておきます。

漬けている間に甘酢を作ります。
水(3)に対して酢(1)の割合で一度、沸騰させお好みの量の砂糖を入れ塩で味を整えます。
植物由来の色素で赤く染めたら自然に冷まし桜の大根を一晩漬けます。
春の鯛をにぎり寿司にしたら花びらの大根を上から乗せてソメイヨシノの花を作ります。

桜の木でできた曲げわっぱにソメイヨシノのお寿司、焼き魚に季節の野菜と鯛とイチゴの酒盗和え、穴子の稚魚の酢の物を盛り込んだら八重桜で飾り付けて出来上がりです。

このお弁当に春野菜の天ぷらでも春の川原を再現してみましょう。

 

鶯の鳴き声が響き渡る山の辺の道で季節を感じるお花見はいかがですか。
桜は農業の神様の依りしろです。

早い若いを意味する「さ」という大和言葉があります。
「さおとめ」や「さみだれ」の「さ」が「早」という言葉です。
いろんな花や若葉が芽吹くには少し早い「さ」の時期にやってくる農業の神様が天から降りてくる時に依りしろとなる「坐(くら)」こそが「さくら」です。
つまり「早坐」が桜です。
桜の花が咲いている時は神様がやって来ていると思いながらお花見をしましょう。

春の野をお弁当に写したくなるのはこういう理由があるのかもしれませんね。
四季を感じるとウキウキします。

河向直樹

1978年奈良県出身。2005年より「山辺の道 花もり」という喫茶店を奈良県桜井市で夫婦で営んでいます。神話が好きで料理が好き。大神神社にある様々なミステリーを勝手に謎解きしながら日々仕込みをしています。今一番気になっていることはは大神神社の摂社である「神坐日向神社」が北向きに建てられている謎です。三輪はどれだけ住んでも飽きない場所です。

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